防災は「準備」から「ふるまい」へ――共助型作法防災の最新版をまとめました

防災は「準備」から「ふるまい」へ――共助型作法防災の最新版をまとめました

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著者:安井明彦
防災士
2026年8月5日

2026年6月、私は「共助型作法防災」の概念定義書をまとめました。その後、研究者の方に読んでいただくことを想定し、言葉の定義、心理的安全性との違い、作法として扱う行為の条件、今後検証すべき点を整理してきました。

今回の8月版は、6月版の考えを別の理論へ変えたものではありません。6月版で大切にした「作法(身体知・ふるまい)を通じて、日常から非常時へ、小さな行動から共助へつなぐ」という考えを中心に戻し、誤解されやすい部分を補った最新版です。

 

共助型作法防災とは

私が考える共助型作法防災とは、次のようなものです。

思いやりや配慮を「作法(ふるまい)」として日常から身につけることで、非常時にも尊厳と選択権を守る小さな共助を生じやすくし、誰もが安心して過ごせる場と防災文化を育てる考え方。

 

短く表すと、次の関係になります。

共助(理念・目的)× 作法(行動・手段)→ 防災文化の形成

防災というと、備蓄、避難経路、マニュアル、訓練などが思い浮かびます。もちろん、どれも欠かすことはできません。しかし、実際の避難生活では、物やルールだけでは解決しにくいことも起こります。

困っていても声をかけられない。必要な物があっても人目が気になって受け取りに行けない。助けを断ると関係が悪くなるのではないかと我慢する。ペットの鳴き声やにおい、動物への恐怖、アレルギーをめぐって、お互いに事情を言い出せない。

このような問題に対して必要なのは、「もっと我慢しましょう」「マナーを守りましょう」と求めることだけではありません。混乱しているときにも選びやすい、小さく具体的なふるまいを、平時からみんなで育てておくことだと考えています。

 

小さなふるまいを「微細行為」として考える

今回の改訂では、あいさつ、声かけ、確認、非詮索などの小さなふるまいを、まとめて「微細行為」と呼ぶことにしました。

たとえば、次のような行為です。

  • 「手伝いましょうか」と決めつけずに尋ねる

  • 断られても態度を変えない

  • 複数の選択肢を示す

  • 必要以上に理由を聞かない

  • 人目が気になる場面では視線を外す

  • 今は話したくないという意思を尊重する

  • 疲れている人が役割を降りたり、休んだりできるようにする

ただし、「小さな行為」なら何でも良いわけではありません。無視、押しつけ、詮索も、小さくても場に影響する行為です。

 

共助型作法として勧めるためには、少なくとも次の三つが必要です。

  1. 相手の尊厳を傷つけない

  2. 選ぶ権利と断る権利を守る

  3. できない人や断った人を責めず、不利益を与えない

作法は、人を「正しくふるまえる人」と「できない人」に分けるためのものではありません。できないこと、言えないこと、断ること、参加しないことも受け止められる場をつくるためのものです。

 

 

「気・場・形」という6月版の考えは残しています

6月版では、作法を「気・場・形」の三つから説明しました。

  • :他者や状況へ注意を向け、配慮しようとする方向づけ

  • :人と人、人と環境の関係から生まれる状況

  • :声かけや確認など、実際に見える具体的な行動

「気が場を読み、形として現れる」。そして、その形が共有され、繰り返されると、場の受け止め方が変わり、次の行動を選びやすくなる。これが共助型作法防災の基本的な考えです。

ただし、日常で繰り返した行動が、災害時に必ず自動的に現れるとは限りません。災害時には疲労や不安が大きく、環境も変わります。そのため、作法は「一度覚えれば大丈夫」というものではなく、訓練で試し、振り返り、場に合う形へ更新していく必要があります。

 

 

心理的安全性とは何が違うのか

心理的安全性は、質問、相談、異論などを表しても不利益を受けにくい、つまり「言っても大丈夫だ」と認識できる状態を主に扱います。

共助型作法防災は、そのような認識を含む環境を、どのようなふるまいによって育てるかを考えます。

たとえば、声をかける、選択肢を示す、断られても責めない、詮索しない、見守る、といった具体的な行動です。心理的安全性を別の言葉で言い換えるのではなく、「言っても大丈夫と思える場」と「その場を育てる小さなふるまい」の関係を、防災の場面で考えるものです。

今回の整理では、場の心理的環境を見るための暫定的な観点として、次の五つを置きました。

  • 相談した後の反応や対応を予測しやすいか

  • 質問、拒否、困りごとの表明によって責められにくいか

  • 誰に、どのように声をかければよいか分かるか

  • 必要、違和感、援助要請、辞退を複数の方法で表せるか

  • 沈黙、距離、プライバシーなどの尊厳が守られるか

これは完成した評価尺度ではありません。これから研究者や当事者の方々と検討するための、暫定的な見方です。

 

 

なぜペット防災から始まったのか

ペット同行避難では、飼い主の準備と適正飼養が欠かせません。同時に、避難所には動物が苦手な人、アレルギーのある人、ペットと離れることで強い不安を抱える人など、異なる事情を持つ人が集まります。

この問題を「飼い主対非飼い主」の対立として考えると、双方が自分を守るために主張を強めやすくなります。必要なのは、どちらか一方に我慢を求めることではなく、飼い主の準備、運営側の受入方針とゾーニング、非飼育者の健康や恐怖への配慮を、同じ場を維持するための調整として考えることです。

2026年8月5日現在、環境省が公表している「人とペットの災害対策ガイドライン」は改訂案の段階です。改訂案では、自治体の事前検討、関係主体の連携、受援、物資、長期避難、飼い主同士の協力などが扱われています。共助型作法防災は、それらの制度や運営を置き換えるのではなく、市民が日常から実践できるふるまいへつなぐ役割を目指します。

 

 

作法は、設備や制度の代わりではありません

あいさつや声かけは、大きな費用を必要としません。だからこそ広げやすい一方で、注意も必要です。

設備、物資、衛生、人員、専門支援、適切な避難所運営を、本来の責任主体が整えず、「みんなの思いやり」で補わせてはいけません。作法は準備不足を正当化するものではありません。

私が考える「防災は準備からふるまいへ」とは、準備をやめるという意味ではありません。物、制度、知識という準備に、ふるまいという実践を加えるという意味です。

 

これから検証していきたいこと

共助型作法防災は、まだ効果が証明された完成理論ではなく、概念提案の段階です。

今後は、防災、社会心理学、援助要請などの専門家による検討に加え、避難所運営者、ペット飼育者・非飼育者をはじめとする当事者の方々に読んでいただきたいと考えています。模擬避難所や防災訓練の場で、小さなふるまいが本当に声のかけやすさや断りやすさにつながるのか、負担や同調圧力を生まないかを確かめる必要があります。

新しい言葉を増やすことより、今ある定義を批判していただき、修正し、現場で確かめることが次の段階です。

 

おわりに

防災は、特別な日だけに行うものではありません。

誰かに声をかけること。尋ねてから手伝うこと。断られても関係を変えないこと。必要以上に聞かないこと。役割を休めるようにすること。

そうした日常の小さなふるまいが、非常時にも互いを支えられる場につながるのではないか。これが、6月版から変わっていない私の問題意識です。

作法で、みんなでたすかる。

この考えを、研究者、行政、支援団体、地域の皆さん、そして当事者の方々と一緒に育てていきたいと思います。


参考資料

公開時の注記

本稿は、2026年8月5日時点の概念提案であり、効果を実証済みの事実として示すものではありません。内容は専門家および当事者による検討を受け、今後修正する可能性があります。作成過程では、過去の議論の整理、文章構成、概念間の区別、反論可能性の点検および文書作成の補助に生成AIを使用し、最終的な採否と内容の責任は著者が負っています。

投稿設定案

  • 検索用タイトル:共助型作法防災とは|日常の小さなふるまいから育てる防災文化

  • 概要文:備蓄やマニュアルだけでは扱いにくい、避難生活の「言いにくさ」「断りにくさ」。ペット防災を起点に、日常の小さなふるまいから共助を育てる「共助型作法防災」の2026年8月最新版を紹介します。

  • タグ候補:防災、共助、ペット防災、避難所、インクルーシブ防災、心理的安全性

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